来週のドル円【環境認識】

2025年1月26日

【考察】

1月の金融政策決定会合で、日本銀行は政策金利を0.50%に引き上げました。この水準は17年ぶりです。ドル円は一時的に円高が優勢となり、154.80台まで下落しましたが、50日線でサポートされると156円台へ反発しました。主要なクロス円も上昇して終えました。これらの状況は円安圧力の強さを示唆しています。

【その他の考慮点】

今週のドル円は、米連邦公開市場委員会(FOMC)で大きく動く展開が予想されます。焦点はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見となるでしょう。タカ派の会見となればドル円の上振れを警戒したいです。週間予想レンジは154.00-158.00です。

【全体的な見通し】

日銀は24日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物レートを0.25%から0.5%に引き上げると決めました。円相場は円高へ振れる局面が見られましたが、その動きは限定的でした。ドル円(USD/JPY)は154.80台まで円高が進行しましたが、海外時間では一転して円安優勢となり156円台へ急反発しました。他の主要通貨でも円は下落しました(円安となりました)。

1月の展望レポートでは持続的な賃金の上昇見通し、個人消費の緩やかな増加基調、円安に伴う輸入物価の上振れなどに言及しています。経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると指摘しています。

また、24年度から26年度にかけての生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年度比上昇率の見通しをそれぞれ引き上げました。日銀の植田和男総裁は会合後の定例会見で、この先も経済・物価の改善が続く見通しであれば、追加の利上げを検討する考えを示しました。しかし、利上げのペースや時期については予断を持たず、経済・物価情勢を慎重に見て判断するとしています。

短期金融市場は会合前に、日銀が年内に政策金利を0.75%程度まで引き上げることを織り込んでいました。会合後もこの見通しに変化は見られませんでした。早期の追加利上げ期待は高まらず、日銀会合後の円相場の動き(円高→円安)は、円安圧力の根強さを浮き彫りにしました。

今週1月28日-29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれます。利下げの見送りはすでに織り込まれているため、市場参加者の関心は今年前半の利下げペースに向いています。よって今回の会合では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見で利下げペースの度合いを見極めることになりそうです。

米債市場では、インフレなどの経済情勢を先取りして動く10年債利回り(長期金利)が一時4.8%まで上昇しました。2024年12月の消費者物価コア指数(CPI)の鈍化でひとまず金利上昇の動きは一服しています。しかし、トランプ米大統領が2月1日までにカナダ、メキシコそして中国に対して関税強化に踏み切る可能性に言及して以降、4.5%の水準がレジスタンスからサポートのラインへ転換しています。トランプ関税によるインフレの再燃を警戒した動きと捉えることができます。パウエルFRB議長もこの点を警戒し、トランプ政策の影響を見極める時間とデータが必要との認識を示す場合は、今年前半の利下げ期待が後退することが予想されます。

短期金融市場では次回の利下げ時期が徐々に後ずれしています。1月24日時点では6月利下げの可能性が意識されています。しかし、パウエル会見で6月利下げの期待も後退すれば、外為市場では米ドル高の進行が予想されます。

筆者が米FOMCに注目する理由は、日米利回り格差の動向にあります。昨年12月中旬以降、日米利回り格差の拡大傾向は一服しています。しかし、縮小トレンドへ転じることもなく膠着状態にあります。

日米利回り格差と高い相関関係にあるドル円(USD/JPY)も155.00-158.00を中心としたレンジ相場の状況にあります。パウエルFRB議長の会見が日米利回り格差の膠着状態を打破すれば、ドル円にも新たな動きが出てくるでしょう。日銀の追加利上げで円安へ振れたこと、パウエルFRB議長が追加の利下げについて慎重な姿勢を示す可能性があることも考えるならば、今週はドル円の上振れを警戒したいです。

【用語解説:初心者向け】

  • 金融政策決定会合:日本銀行が金融政策を決定するための会議
  • 政策金利:中央銀行が金融機関に貸し出す際の金利
  • ドル円(USD/JPY):米ドルと日本円の為替レート
  • クロス円:日本円と他の通貨の為替レート
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC):米国の金融政策を決定する機関
  • パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長:米国の中央銀行である連邦準備制度のトップ
  • タカ派:金融政策において、インフレ抑制を重視する立場
  • 無担保コール翌日物レート:金融機関同士が無担保で資金を貸し借りする際の翌日返済の金利
  • 展望レポート:日本銀行が経済・物価の見通しを示す報告書
  • 消費者物価指数(CPI):消費者が購入する商品の価格変動を示す指標
  • 短期金融市場:短期間で資金を貸し借りする市場
  • 米債市場:米国の債券が取引される市場
  • 長期金利:長期間の債券に適用される金利
  • トランプ関税:トランプ米大統領が導入した関税政策
  • 日米利回り格差:日本と米国の債券利回りの差
  • レンジ相場:一定の範囲内で価格が変動する相場
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