円高の進行には日銀の動きが影響しています。日銀は31日までの金融政策決定会合で市場の予想通り金融政策を維持する決定をしました。その後、植田総裁は記者会見で、今後の金融政策の方針について「通常の決定プロセスに戻る」と述べました。9月20日の会合後の会見では、米国経済の不透明さを背景に「追加利上げの判断にはまだ時間の余裕がある」としており、これが利上げに慎重な姿勢と見なされていました。
植田総裁が発言を変えた背景には、米国経済の見通しの変化があります。9月には米国の労働市場が不安視され、ドル円相場も円高傾向で、1ドル=139.56円に達しました。しかし、10月4日に発表された9月の雇用統計で労働市場が堅調であることが明らかとなり、再び円安の流れが強まる要因となりました。植田総裁は31日の会見で、米国経済に関するリスクは徐々に緩和されていると指摘し、「リスクに時間的余裕をもって注視する必要は減少している」と説明しました。
こうした状況の中、市場では12月18・19日の金融政策会合での日銀の利上げが見込まれるようになっています。ブルームバーグのデータによれば、日本時間1日午前11時時点で12月の会合で0.25%の利上げが実施される確率は33.2%とされ、前日の24.4%から上昇しています。