週末の環境認識

【株式相場見通し】

来週の東京株式市場は神経質な展開が予想されます。国内では主要企業の決算発表が一巡し、重要な経済指標の発表もないため、手がかりが不足しています。同様に海外でも注目材料は限られており、国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのパウエルFRB議長の講演が特に注目されます。この講演は日本時間25日の午後11時頃に行われるため、週末まで模様を眺めるムードが強まり、その間は日米の長期金利や為替に対する神経質な展開が予想されます。

米国の10年債利回りは17日に一時4.33%まで上昇しましたが、その後は4.23%程度に下落し、上昇勢が一服しています。同様に、国内の10年物国債利回りも、今週に入って再び上昇した後は一服傾向を示しています。7月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品やエネルギーを除いたコアコア指数が前年同月比+4.3%と拡大しましたが、市場予想には及ばず、日本銀行の追加の政策修正観測は高まりませんでした。

ただ、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言次第で、日米の長期金利の上昇が再開する可能性があります。市場はFRBの金融政策について、次回9月のFOMCでは利上げ据え置きがほぼ確実視されていますが、11月のFOMCでは0.25ポイントの利上げを織り込んでいるところもあります。ただし、7月のFOMC議事要旨やFRB高官の発言を考慮すると、利上げの織り込みが不十分に思える部分もあります。市場は来年前半からのFRBの利下げ転換を見込んでいますが、これに関してもやや楽観的な見方が広がっています。したがって、パウエル議長の講演で市場の見方がどう変わるかが重要です。

今年のジャクソンホール会議のテーマは「世界経済の構造変化」で、自然利子率に関する言及も注目されます。米国の自然利子率は実際には従来の予想よりも高いという議論があり、これが市場にどのような影響を及ぼすかが注目されます。パウエル議長が自然利子率の上昇を示唆した場合、金融引き締めの長期化や利下げ転換が遠くなる可能性があり、市場はこれに注意を払う必要があります。

さらに、米半導体企業のエヌビディアが決算を発表します。同社の決算と株価反応は相場の動向に影響を与えると考えられ、特に人工知能関連の成長が注目されます。ただし、同社の株価は調整したとはいえバリュエーションが高く、高値更新のハードルは高いとされています。

相場は依然としてボラティリティーが高く、神経質な展開が続くでしょう。投資家はリスクを最小限に抑える戦略を採用することが重要です。また、中小型グロース株は売られている傾向がありますが、長期金利の見通しを考えながらも押し目買いについては慎重に検討するべきです。

【為替市場見通し】

来週のドル・円相場は伸び悩む可能性があります。FRBは金融引き締め方針を維持しており、年内に追加の利上げが予想されています。ただし、日本政府や日本銀行の為替介入への懸念が依然として残っており、これが円売りを抑制する要因となっています。米国の経済指標は強弱が入り混じっていますが、生産者物価指数(PPI)や小売売上高のような好ましいデータが外為市場の関心を引いています。これに基づき、米国経済が堅調であるため、FRBの引き締め政策が続くとの見方が強まっています。

7月のFOMC議事要旨によれば、ほとんどのFRB当局者がインフレ率の再加速を見込んでおり、これが利上げの継続を正当化する要因とされています。ただし、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言が物足りない場合、ドル買いはやや後退する可能性があります。ドル・円相場は昨年11月以来の高水準に達しましたが、今後の上昇余地を見極めるための局面となるでしょう。

【来週の注目スケジュール】

8月21日(月):中・ローンプライムレート(LPR)、米・トランプ前大統領の記者会見など
8月22日(火):日・基調的なインフレ率指標、米・中古住宅販売件数、米・シカゴ連銀総裁のイベントでの挨拶など
8月23日(水):日・欧・米の総合PMI、米・新築住宅販売件数、米・共和党大統領選候補者討論会、米・決算発表(アナログ・デバイセズ、エヌビディア、スノーフレークなど)など
8月24日(木):トルコ・中央銀行の政策金利発表、米・耐久財受注、米・ジャクソンホール会議開催など
8月25日(金):日・東京CPI、日・企業向けサービス価格指数、米・ミシガン大学消費者マインド指数、米・パウエルFRB議長のジャクソンホール講演など

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